散歩中にリードが手から滑り落ちる、一瞬の静寂。雷の音にパニックになった愛犬が、ドアの隙間から駆け出してしまう悪夢。
飼い主であれば誰もが一度は想像し、胸が締め付けられるような「もしも」の事態。スマートペットライフ編集部では、この“もしも”を前提にした複数のシナリオを想定し、検証観点を整理しています。
本記事は、その不安に対する「現実的な対策」の一つを整理します。
なぜGPSトラッカーが迷子対策で有力な選択肢になり得るのか? どの仕組みなら役に立つ可能性が高いのか? 月額課金は本当に割高なのか?
海外の動向や運用時の注意点も含め、飼い主が後悔しないための選び方の本質をまとめました。
安全に関する重要な注意
本記事は、一般的な情報および編集部の取材・確認に基づくガイドです。
急な体調不良・事故・迷子など、緊急性の高いケースでは、必ず地域の動物病院や自治体・保健所・警察等の正式な窓口に速やかに相談してください。ここで紹介する製品や機能は「必ず見つかる」「必ず防げる」ことを保証するものではありません。最終判断とご利用は飼い主ご自身の責任でお願いします。
アフィリエイト開示:記事内にはアフィリエイトリンクを含みますが、評価は編集方針(実機検証と一次情報重視)に基づき独立して行っています。
- 迷子対策として「マイクロチップでは防げないこと」「GPSで初めてできること」
- GPS / Bluetoothタグ / RF無線 / マイクロチップの違いと、向いている状況
- 国内外の代表モデルを、重量・電池・月額・防水で比べる指針
【再確認】なぜGPSトラッカーが『お守り』以上の存在なのか?
環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況(令和5年度版)」では、年間で約4.5万頭が自治体に引き取られ、そのうち約9千頭が殺処分という数字が示されています。
マイクロチップは受動的備え(保護後の身元照合)で、リアルタイムに居場所を教えるものではありません。GPSトラッカーは位置をスマホへ送る能動的備えで、発見までの時間に影響しうる点が異なります。
環境省が公表している最新集計を編集部で要約しました(概数)。
| 区分 | 頭数(全国) |
|---|---|
| 自治体に引き取られた犬・猫の総数 | 約44,576頭 |
| うち殺処分となった頭数 | 約9,017頭 |
| 飼い主へ返還・返戻できた頭数 | 約7,607頭 |
出典:環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況(令和5年度版)」。数字は四捨五入した概数です。
出典:環境省 公表資料
ペットと私たちの生活をテクノロジーでどう守るか? スマートペットライフが推進する「ペットテック」の全体像はこちら。
▶ ペットテック完全ガイド【2025年】選び方と導入の注意点
購入前に絶対知るべき、ペットトラッカー3つの方式と違い
「ペットトラッカー」と一括りにされがちですが、位置を把握する仕組みは大きく3種類あります。
「AirTagでもいいの?」「受信機タイプは安いけど十分?」といった疑問は、ここを理解すると整理できます。
位置追跡技術の3方式概要
GPS方式
衛星で位置を推定し、携帯網(4G/LTE等)でスマホへ送信。広域で追跡しやすい反面、通信費が発生。
屋外の広範囲捜索に向きやすい
Bluetooth方式(AirTag等)
近くを通る他者のスマホが検知・更新するクラウドソーシング型。人通りの少ない場所では更新が止まる可能性。
迷子の継続追跡には限界が出やすい
無線(RF)方式
受信機と直接通信。月額不要で圏外でも使える一方、範囲は数十〜数百m規模。
屋内/敷地内の「かくれんぼ」探索向け
| GPS方式 | Bluetooth方式 | RF方式 | マイクロチップ | |
|---|---|---|---|---|
| 追跡範囲 | 携帯圏内なら広域 | 人の多い範囲に限定 | 数十〜数百m | リアルタイムなし |
| リアルタイム性 | 設定・通信で高くできる | 他人のスマホ頼み | 近距離で高い | なし(照合のみ) |
| 月額 | 必要(通信費) | 不要 | 不要 | 不要 |
| 適用 | 迷子捜索の中核 | 鍵/バッグの紛失防止 | 屋内・敷地内探索 | 身元照合 |
| 留意点 | 圏外では機能しにくい | 人気のない場所で沈黙 | 広域カバー不可 | 飼い主側から探せない |
GPS トラッカーは屋外での位置情報が強みで、屋内の細かな行動パターン可視化には、CatLog のようなウェアラブルが役立ちます。

ペット用GPSトラッカー選びで外せない6つの核心ポイント
市場には似たような見た目のデバイスが並びますが、使い勝手や運用要件は同一ではありません。
スマートペットライフでは、迷子対策として役立つかを見極めるために、6つの評価軸を使っています(スペックの羅列ではなく、緊急時にどれだけ頼れるかの観点)。
GPSトラッカー選びの6つの核心
- ① 精度と更新頻度環境・設定により数秒〜数分の幅
- ② バッテリー寿命ライブ追跡時の減り方/省電力機能
- ③ サイズと重量猫/小型犬は20g前後が参考(個体差)
- ④ 防水・防塵IP等級の意味と試験条件外の差異
- ⑤ 付加機能ジオフェンス/行動ログ等
- ⑥ コスト本体+月額の2年総額(TCO)
①【最重要】測位精度と更新頻度 ― 「今どこ?」が何秒以内でわかるか
対応衛星(GPS/GLONASS/QZSSなど)が複数だと、ビル街や山間部で位置ズレが生じにくい傾向があります。
逃走時に数秒おきの更新を狙う「ライブトラッキング」モードの有無も重要です。※更新間隔は製品・設定・通信状況により数秒〜数分と幅があります。
② バッテリー寿命 ― カタログ値だけで安心しない
「最大〇日」は待受想定の数値であることが多く、ライブ追跡時は大きく低下します。
自宅など安全圏で測位を自動セーブする「節電ゾーン」等がある製品は、日常運用の手間が軽減されます。
③ サイズと重量 ― 小型犬や猫なら20g前後を参考に
トラッカーは“常時装着”が前提。特に体重5kg未満の小型犬・猫では、20g前後かどうかが快適性の分かれ目になる場合があります。
装着感は個体差が大きいため、メーカー推奨条件を確認のうえ短時間から慣らしてください。研究領域では機器重量を体重の数%以内とする目安が議論されています。
④ 防水・防塵性能 ― 「IPX7」って何?
防水・防塵性能は国際規格「IP等級」で示されます。例:「IP67」=防塵6・防水7(IPX7相当は1m/最大30分の浸水試験)。
ただし流水・温度差・衝撃など試験条件外では性能が異なる場合があります。少なくともIPX7相当以上を目安にすると、雨や水たまり程度に対応しやすくなります。
⑤ 付加機能 ― 仮想フェンス通知は“兆候”に気づく助け
代表的なのが「ジオフェンス(仮想フェンス)」。
「庭」「ドッグラン」「自宅周辺」など安全圏を設定し、出入りで通知します。
外出の兆候に早く気づける可能性を高めますが、通知の精度や遅延は環境や設定に依存します。
⑥ コスト ― “本体が安いか”ではなく“2年総額で高いか安いか”
GPSトラッカーはSIM通信(4G/LTEなど)を使うため月額費用が発生します。
スマートペットライフでは、2年間使う前提での総額(TCO: Total Cost of Ownership)を比較指標にしています。
総所有コスト(TCO)の考え方
計算式:本体価格 + (月額プラン料金 × 24ヶ月)
※「2年は使う」と想定したときの目安です。通信費はメーカーの公式プラン・長期契約割引などで変動する場合があります。
| 製品例 | 本体価格 | 月額(目安) | 2年総額の目安 |
|---|---|---|---|
| Tractive GPS | 約6,900円 | 約500円/月〜 | 約18,900円(6,900円 + 500円×24ヶ月) |
| ねこなら | 約16,800円 | 約500円/月〜 | 約28,800円(16,800円 + 500円×24ヶ月) |
価格は各公式情報・国内販売告知等をもとにした編集部の整理(2025年10月時点)。一括契約やキャンペーンで変動する場合があります。
Tractiveは本体価格が6,500〜6,900円台・月額500円〜の定額プランが案内されており、ねこならは本体16,800円と月額500円〜のプランが提示されています。
【目的別】2025年版ペット用GPSトラッカー主要モデルの比較
ここからは、上の6つの評価軸に照らして、国内外で流通している代表的なモデルをピックアップします。
「どれが最強?」ではなく、「あなたの子と生活スタイルに合うのはどれ?」という視点で見てください。
【目的別】2025年版ペット用GPSトラッカー主要モデルの比較
おすすめモデル比較カード
Tractive GPS
世界的に普及。ライブ追跡/ジオフェンス/活動量ログの総合バランス型。
- 重量約35g
- バッテリー最大14日(待受目安)
- 防水・防塵IP68相当
- 月額約500円〜
- 機能ライブ追跡 / ジオフェンス / 活動・睡眠ログ
※日常は省電力で充電手間を軽くする設計が案内されています。
確認: ライブ更新間隔/ジオフェンス通知時刻/屋外・屋内の測位安定性/省電力挙動。
記録: 更新タイムスタンプ、通知受信時刻、経路スクショ、電池推移。
注意: 結果は環境・設定・回線品質で変動。安全・医療の保証ではありません。
ねこなら
日本発。サイズと重量を優先しつつ、必要機能をコンパクトに。
- 重量約20g
- バッテリー最大7日(待受目安)
- 防水・防塵IP67相当
- 月額約500円〜
- 機能ライブ追跡 / ジオフェンス / 歩数・行動ログ
※本体約16,800円、通信プランは500円台〜(長期契約時の目安)。最新情報は公式をご確認ください。
確認: 首輪幅と固定方法、初日の行動変化、充電サイクル、ジオフェンス通知の実用。
記録: 体重・首囲・装着時間帯、電池残量推移、通知ログ。
注意: 装着感は個体差が大きいので短時間から慣らし、メーカー推奨条件を遵守。
【海外トレンド】“どこにいる?”から“元気?”へ。次世代スマート首輪の今
位置追跡から一歩進み、生体信号や行動の傾向を可視化するウェアラブル首輪が登場(医療的診断ではありません)。
位置追跡とヘルスモニタリングの得意分野イメージ
編集部リサーチによる定性的なイメージ比較(機能はモデル/アプリ/アップデートで変動)。
- Tractive位置:ライブ更新設定あり(頻度は設定・通信に依存)健康:活動量/睡眠の可視化 等
- PetPace位置:GPSベース健康:体温・呼吸・HRV等の可視化/通知(診断ではない)
- Fi Smart Collar / Fi Mini位置:脱走アラート/追跡をうたう健康:活動・睡眠・行動の可視化
- Maven位置:GPS非搭載モデルあり(迷子対策ではなく健康観察特化)健康:呼吸/かゆみ/飲水/睡眠の変化を可視化
まとめ:最適なトラッカーで「もしも」の不安を「いつでも」の安心へ
「どの方式が生活に合うか」「Bluetoothの限界」「小型ペットは軽さ重視」――判断材料は出そろいました。最後に6ポイントを再確認して選定に役立ててください。
GPSトラッカー選びの6つの核心
- 🎯① 精度と更新頻度逃走中の「いまどこ?」に追いつける運用設定か
- 🔋② バッテリー寿命省電力モードの有無と充電サイクル
- ⚖️③ サイズと重量猫・小型犬は20g前後が参考(個体差)
- 💧④ 防水・防塵IP等級の意味・試験条件外の差異
- ⚙️⑤ 付加機能ジオフェンス/行動ログ
- 💰⑥ コスト本体+月額の2年総額(TCO)
どんな高性能なデバイスでも、絶対の保証はありません。
ただし、「どのタイプが、うちの子と暮らし方に合うのか」を冷静に考え、適した一台を選ぶことは、“不安なもしも”を“備えのある日常”に変える一歩になります。
備えを強化する一助になれば幸いです。
ペットテックの基礎と優先順位は ペットテック総合ガイドで解説しています。

※製品・料金は公開情報等を基に記載。最新の仕様・料金・提供状況は各公式でご確認ください。
※本記事にはアフィリエイトリンクを含む場合があります。掲載内容は編集ポリシーに基づき客観的な比較・確認を行っています。
参考文献
市場データ・統計
- Pet Tech Market Size & Share, Statistics Report 2032 — アクセス日: 2025-11-12
- Pet Tech Market in FY2018 Reached 740 Million Yen; FY2023 5,030 Million Yen — アクセス日: 2025-11-12
- Total Pet Business Market Size for FY2023 — アクセス日: 2025-11-12
- Industry Trends & Stats — アクセス日: 2025-11-12
- Pet humanisation drives global pet care sales(2024-09-30) — アクセス日: 2025-11-12
日本の制度・公的情報
- 犬と猫のマイクロチップ情報登録について — アクセス日: 2025-11-12
- Registration system of microchip information — アクセス日: 2025-11-12
- マイクロチップ装着等の義務化に係る制度説明(PDF) — アクセス日: 2025-11-12
- 狂犬病予防法関連(犬の登録・注射済票等の案内) — アクセス日: 2025-11-12
- Import dogs and cats into Japan — アクセス日: 2025-11-12
- Guide to importing dogs and cats into Japan(PDF, ISO11784/11785準拠) — アクセス日: 2025-11-12
テレメディシン/ヘルスモニタリング(査読・レビュー)
- Contactless heart rate monitoring from pet facial videos — アクセス日: 2025-11-12
- Non-Contact Vital Signs Monitoring of Dog and Cat Using a UWB Radar — アクセス日: 2025-11-12
- Remote Vital Sensing in Clinical Veterinary Medicine — アクセス日: 2025-11-12
セキュリティ・規格・ラベリング
- OWASP Internet of Things(IoT Top 10 ほか) — アクセス日: 2025-11-12
- NISTIR 8259A — IoT Device Cybersecurity Capability Core Baseline — アクセス日: 2025-11-12
- Internet-connected devices can now have a label that rates their security(U.S. Cyber Trust Mark) — アクセス日: 2025-11-12
※外部サイトです。数値・仕様・制度は更新される場合があります。最新情報は公式ページおよび一次資料をご確認ください。


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