【2025年版】ペット見守りグッズ完全ガイド｜海外発ペットテックを日本の暮らしでどう活かすか

仕事中、ふとデスクのスマホが震え、画面を見ると「○○ちゃんがトイレに入りました」という通知が表示される。ほんの数年前まで、これはCESのステージや海外メディアに登場する「未来のペットテック」の一場面でした。

ところが今、この通知は多くの飼い主さんにとって現実になりつつあります。単に「トイレに行った」という事実だけでなく、「尿量がいつもより少ない」「滞在時間が長い」といった、言葉にできない小さな変化までログとして残せるようになりました。

2025年、ペットケアの世界は大きな転換点を迎えています。CES（世界最大級のテクノロジー見本市）でも示されたように、ペットテックは単なる「便利グッズ」から、「日々の変化を記録・可視化するライフインフラ」へと進化しつつあります。AIによる行動解析、心音・呼吸の推定、表情からの感情推定など、「なんとなく不安」を具体的なデータに変える技術が次々と登場しています。

一方で、海外記事やCESレポートを眺めるだけでは、こうした未来像をそのまま日本の住環境に持ち込むことはできません。電波法や技適、通信方式、狭い住宅事情、多頭飼いのスタイルなど、日本ならではの条件があるからです。

そこで「Smart Pet Life」では、世界のトレンドを前提にしつつも、日本の住宅事情や法制度にフィットし、実際に日本語サポート付きで入手できるデバイスだけを選び抜きました。本記事は、海外発の“未来のペットテック”と、今すぐ日本で導入できる現実的な選択肢との橋渡しガイドとして位置付けています。

免責事項：本記事の内容は、ペットテック製品および見守りデバイスに関する一般的な情報提供を目的としたものであり、 個別の症状に対する診断・治療方針の決定を行うものではありません。ペットの体調や行動に気になる点がある場合は、 必ず獣医師にご相談ください。
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テクノロジーは、決して飼い主の愛情に取って代わるものではありません。むしろ、あなたの愛情を「データ」という形に変換し、「気づけなかったかもしれない変化」に気づくためのヒントを増やしてくれる存在です。ここからは、海外トレンドで語られるコンセプトを軸にしながら、日本で今すぐ導入しやすい順番で見ていきましょう。

まずは、海外のカンファレンスやニュースで語られている 「未来のペットテック」のキーワードと、この記事で取り上げる 「日本で今すぐ導入しやすいデバイス」の対応関係を 一枚のマップにまとめました。 自分の不安に近い行から、気になる章を選んで読んでみてください。

Chapter 1 「トイレ」が一番正直な健康ログになる ～排泄モニタリングの最前線～

「猫は痛みを隠す生き物である」。この習性は、世界中の飼い主に共通する悩みです。特に猫の死因の上位を占める腎臓病や下部尿路疾患は、気づいた時には進行していることが少なくありません。

そのため、海外のカンファレンスでも、「排泄ログをどう記録し、早期の変化に気づくか」というテーマはたびたび取り上げられています。最新のスマートトイレは、尿量・体重・トイレの回数・滞在時間などを自動で計測し、「いつもと違う傾向」があればアプリに通知する仕組みが一般的になりつつあります。

ただし、海外製のハイスペックモデルをそのまま日本で使おうとすると、技適マーク・サポート言語・設置スペースなどの壁にぶつかることが少なくありません。そこで本記事では、まず日本で現実的に導入しやすいスマートトイレを起点に、海外コンセプトとの接点を見ていきます。

Toletta（トレッタ）とAI顔認識の革命

日本国内で、海外にも通じる存在感を放っているスマートトイレが「Toletta（トレッタ）」です。

特筆すべきは、カメラによるAI顔認識技術を採用している点です。多くのスマートトイレや活動量計が「専用の首輪タグ」を必要とする中、トレッタは首輪が不要です。これは、首輪を嫌がって外してしまう猫や、皮膚が敏感な猫にとって決定的なメリットとなります。

海外の展示会では「高性能なセンサー＋専用首輪」で個体識別を行う製品も多く見られますが、トレッタは日本の住宅環境と多頭飼い事情に合わせて、「猫の顔そのもの」をIDとして扱うアプローチを選んだと言えます。

また、2024年のプラン改定により、本体価格が実質無料（月額プランへの加入が条件）となった点も見逃せません。初期費用のハードルが下がったことで、「まずは1台だけ導入してみる」という選択がしやすくなりました。特に多頭飼育の家庭では、カメラが猫の顔を見分けてデータを振り分けてくれるため、「誰がいつトイレをしたか」の管理が、海外の研究事例に近いレベルで実現しやすくなっています。

Sharp vs Toletta 国内2大機種の比較

海外の展示会には多種多様なスマートトイレが並びますが、日本語サポート・技適マーク・国内サポートまで含めて考えると、現状では「Toletta」と「Sharp ペットケアモニター」が2大軸と言えます。どちらも「排泄データをログとして残す」というコンセプトは共通しつつ、得意分野が少し異なります。

Sharpの強みは、重量センサーによる尿量測定の精密さと、カメラがないことによるプライバシー面の安心感（トイレ設置場所が脱衣所などの場合）です。一方、専用バッジを首輪につける必要があるため、首輪が苦手な子には不向きです。

海外の最新スマートトイレのように「トイレ＋自動清掃＋大容量リッターボックス＋AI解析」まで一体化したモデルも存在しますが、日本で長く安心して使うことを考えると、まずは国内サポートがしっかりした2機種のどちらかから始めるのが現実的な一歩です。

24時間の「命綱」 ～ウェアラブル＆GPSトラッカーの進化～

トイレが「点」の観測だとすれば、首輪型のウェアラブルデバイスは「線」の観測です。24時間365日、愛猫・愛犬の体に密着し、活動量、睡眠、そして微細な行動の変化を記録し続けます。

海外のペットテック展示会では、心拍・呼吸数・位置情報を一括でモニタリングする高機能な首輪型デバイスも増えています。しかし、通信方式や電波法、サイズ感の問題から、そのまま日本の一般家庭で使える製品はまだ多くありません。

その中で2025年、日本の飼い主目線で見ると大きなブレイクスルーになっているのが、「バッテリー寿命」と「装着ストレス」の改善です。特にCatlogの第2世代モデルは、「未来っぽさ」だけでなく、日常的に使い続けられる実用性という意味で、海外トレンドと日本の現実をつなぐ存在になっています。

Catlog（RABO）の第2世代革命：充電ストレスからの解放

「猫様の健康管理はしたいけれど、頻繁に首輪を外して充電するのはかわいそう…」。多くの飼い主さんが抱えていたこのジレンマに対し、Catlogが出した回答が第2世代の「Catlog 2」です。

最大の特徴は、バッテリー持ちの大幅な改善です。初代モデルでは約1週間程度だった稼働時間が、設計の刷新により、使い方によっては最大1ヶ月以上持つようになりました。

これにより、充電のために首輪を外すことによる「データ欠損（空白の時間）」が減り、見守りの精度が向上します。また、猫にとっても「頻繁に首輪を付け外しされるストレス」が減るため、まさにWin-Winの進化と言えるでしょう。

取得できるデータも深化しています。「食べる」「飲む」「寝る」といった基本動作に加え、「毛づくろい」の頻度や時間をAIが判定します。例えば、「毛づくろいが急増した＝皮膚の痒みやストレスのサインかもしれない」といった、肉眼では見逃しがちな変化に気づくきっかけを与えてくれます。ただし、これだけで原因を特定できるわけではないため、気になる変化が続く場合は獣医師への相談が前提です。

このように、Catlogは海外で語られる「データドリブンなペットケア」の考え方を取り入れつつ、日本の室内飼い文化と住宅事情に合わせてチューニングされたウェアラブルと言えます。

犬用GPSトラッカーと「迷子」の現実：AirTagでは埋められないギャップ

次に、ワンちゃんの飼い主さん、特に「脱走」や「災害時の迷子」を心配される方へ。ここで一つ、非常に重要な事実をお伝えしなければなりません。

「AirTag（エアタグ）を首輪につけていれば安心」は、大きな誤解です。

AirTagはBluetoothを使って「近くのiPhone」と通信する仕組みであり、自身にGPSは搭載していません。そのため、人通りの少ない河川敷や山中、iPhoneユーザーがほとんどいないエリアで迷子になった場合、位置情報は更新されず、「最後に検知された場所」から先が追えないということも起こり得ます。

そこでおすすめしたいのが、本来は子供の見守り用として開発されたGPS端末、「BoTトーク」などの流用です。海外でも「子ども向けGPSをペットに応用する」という発想はありますが、日本は通信インフラが整っており、小型端末でも実用的な精度を出しやすい環境です。

BoTトークは、GPS優先モードでも2週間〜1ヶ月程度バッテリーが持ちます。専用品ではありませんが、小型のポーチに入れてハーネスに装着することで、多くの飼い主さんが迷子対策の補助ツールとして活用しています。

海外発の「リアルタイムトラッキング首輪」のコンセプトを、日本で実現しようとしたときに現実的なのがこうしたGPS端末です。「常に位置が追えるかどうか」ではなく、「いざという時に、手掛かりゼロの状態を減らせるか」という視点で検討するのがおすすめです。

Chapter 3 「お留守番」をアップデートする ～カメラ・ロボット・給餌器～

玄関のドアを閉めるとき、寂しそうな愛犬の目を見て胸が締め付けられる——。そんな経験は、多くの飼い主さんに共通するものです。海外の展示会では、自走する見守りロボットや、ペットと会話できるようなコンセプトデバイスも数多く登場しています。

とはいえ、そうした“未来感全開”のロボットを、いきなり日本のマンションや狭いリビングに持ち込むのは現実的ではありません。そこで本章では、「留守番の不安」を減らすという目的に対して、日本で今すぐ導入しやすい現実解——AIペットカメラとスマート給餌器——にフォーカスします。

Furbo（ファーボ）：おやつカメラから「AI見守りサービス」へ

ドッグカメラの代名詞とも言える「Furbo」。 おやつが飛び出す機能が有名ですが、最新モデルで真に注目すべきは「AIによる見守り機能」です。

「ガラスが割れる音」「犬の嘔吐音」「活動量の急激な変化」などをAIが検知し、スマホに通知します。ただし、これらの高度な機能の多くは、現在サブスクリプションサービスである「Furboドッグシッター」への加入が必要となっています。

海外でも、カメラ本体は比較的手頃な価格に抑え、「異常検知や録画のクラウド保存をサブスクで提供する」というビジネスモデルが主流になりつつあります。Furboは、その流れを日本向けにローカライズした代表例といえます。

「月額料金がかかるのか…」と躊躇する方もいるでしょう。そこで、プランによる機能差と「安心料」としての価値を整理しました。

シニア犬や持病のある子がいるご家庭（たとえば「嘔吐にすぐ気づきたい」というニーズが強いご家庭）にとって、嘔吐や異変の通知は、受診のタイミングを早めるきっかけになり得ます。一方、若くて健康なワンちゃんの「お楽しみ」として使うなら、基本機能だけでも十分に楽しめます。

海外の「ペットシッターAIサービス」を日本の生活に落とし込むとき、「どこまでの安心を、いくらで買うか」を考えるのがポイントです。常時録画や高度な通知まで必要なのか、それとも「ライブ映像とおやつ機能があれば十分」なのか、ご家庭ごとに線引きをして選びましょう。

スマート給餌器と「災害対策（BCP）」：日本ならではの視点

自動給餌器（スマートフィーダー）は、単なる「餌やりの自動化」ではありません。地震や台風が多い日本では、「災害時にもフード供給を途切れさせないためのバックアップ手段」としての側面が非常に重要になります。

海外製のスマートフィーダーの中には、Wi-Fi接続とスマホ操作を前提としたモデルも多く存在します。しかし、地震や台風で停電したとき、あるいは交通網が麻痺してあなたが帰宅難民になったとき、自宅のWi-Fiルーターは止まり、スマホからの操作も期待できなくなります。

その状況を踏まえると、日本でスマート給餌器を選ぶ際は、デザインやカメラ画質よりも、以下の「BCP（事業継続計画）基準」を最優先で確認することをおすすめします。

このように、給餌器に関しては「海外で話題の最新スマートフィーダー」よりも、日本の災害リスクを前提にした設計かどうかが重要です。カメラ付きかどうか、デザインが好みかどうかは、その次に考えるくらいでちょうど良いバランスです。

また、カメラ付き給餌器を導入する場合は、セキュリティにも注意が必要です。初期パスワードのまま使用せず、必ず複雑なパスワードに変更し、ファームウェアを常に最新に保つこと。これが、海外でも繰り返し警告されている「ネットワークカメラ時代の基本的な戸締まり」です。

Chapter 4 未来への展望と、「今できる一歩」の選び方

CES 2025で示された大きなトレンド、それは「予防ケアの民主化」です。

これまでのペット医療は、どうしても「具合が悪くなってから病院へ行く」という後手の対応になりがちでした。しかし、AIとセンサー技術の進化は、家庭を「日々の変化に気づくための観察拠点」へと変えつつあります。

一方で、海外の華やかなデモ動画だけを見ていると、「うちには関係ない未来の話」と感じてしまうかもしれません。本記事で紹介してきたのは、そのギャップを埋めるための、日本で今すぐ導入しやすい現実的な選択肢です。

私たちが目指すべき「スマートペットライフ」とは、単にハイテクな機械に囲まれて暮らすことではありません。データの力を使って、愛する家族のケアを「なんとなくの推測」から「根拠のある判断材料をもとにしたケア」へと少しずつシフトさせることです。

もちろん、最終的に判断し、行動するのは私たち飼い主です。AIは診断を下しませんが、「いつもと違うよ」と肩を叩いて教えてくれます。その小さな合図に気づけるかどうかが、愛猫・愛犬の健康について、より早く適切な対応を検討できるかどうかに関わってきます。

海外発の未来的なデバイスをすべて一度に取り入れる必要はありません。むしろ、ご家庭ごとの不安やライフスタイルに合わせて、1つずつ導入していくのが現実的で、長続きしやすい方法です。

「仕事に行きたくない」と思う朝も、外出先からカメラでお腹を出して寝ている愛犬を見れば、ふっと心が軽くなる。
「今日は水をあまり飲んでいないな」と気づけば、帰宅してすぐにウェットフードをあげる準備ができる。

これらは全て、テクノロジーがなければ生まれなかった「新しい愛情表現」の形です。

全てのデバイスを一度に揃える必要はありません。まずは一つ、あなたの不安を一番解消してくれるデバイス（トイレでも、カメラでも、ウェアラブルでも）から始めてみてください。そこから得られる「安心」と「発見」は、きっとあなたとペットの暮らしを豊かにしてくれるはずです。